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切ないけれど、後味はあったかい~






もう、いつだったのかしら?


目を細め遠くを見つめるがごとく、
そんなことを思う…




そうなんです、我が家にお越しいただいた
BL本団体ご一行さま、
今年もノパールのBL本師匠から送っていただいたのですが、


おもてなしの心づくしもできないまま、
時間だけがカチカチと時すすみ、

せめてミスタービーシーにだけはペロペロ舐められないようにと、

緑のお部屋の奥の奥へとおいやられていたご本の数々~




ここきて、たちまち2冊読破です!

やるときはやる女~









本日のブログは
BL本の感想ですので、

興味のない方
嫌悪されるかたは
いつものようにスルーにてお願い致します。




















さて2回にわけて感想を言いたいのがこちら~



それは尾上与一さんの1945シリーズです。


蒼穹のローレライ

プルメリアの頃
(両方ともHolly Novels 既刊案内に飛びます。)










いやあ、知らぬ間に、

これ、1945シリーズという風に銘打ってたのね。

過去において、
ノパールの書いた感想文はこちらから。






でね、我が家で滞在しているBL本のお客様、

この1945シリーズが2冊ありましたので、

同時の感想を書いちゃおうかしらん?


って思ったけど、
やっぱり、尾上さんの作品は一緒くたには語りきれません。


ということで

本日はまず、蒼穹のローレライからでございます。




いつものように勝手気ままなネタバレありあり~の
個人の意見大行進のような感想でもいいよ~
って方のみこちらからどうぞ。








これを読んで、

わたしの中で尾上与一ベスト~

上書きされました~じゃん!



今まで読んだ尾上与一さんの中で、


この蒼穹のローレライ


これがわたしの中のベストワンです!!!
{ずるいようですが、
二月病はまた別の次元なので
これとは、比較はできません~vv







いつものように、
尾上さんが描きあげる青い空、

それはどこからどうきっても南国の空~


この方の描写力は本当にいつ読んでも圧巻。



ちっともおしつけがましくないのに

気が付くとわたしも南国の空の下にいました。




今回のペアは零戦乗りとその整備士のお話です。


事故のために喉を傷め、
声が思うように発せられない零戦搭乗員、塁。

己の言葉を他人にずっと理解してもらえず、

掠れた声も
心の痛みも、
すでに諦めるように、

そして生きがいは、やがて歪んだ願いを生み、

亡き父の汚名を背負い、
死ぬことだけを唯一の心の支えに生きてきた男です。



ところが塁の人生に光を与えてくれる男が出現します。


塁の声をいち早く理解し、
そしてその行間すらも読み取ろとする飛行整備士、三上。


この心優しき三上との出会いで
塁の死んでいた心に徐々に血が蘇っていくのです。


塁はずっとずっと死ぬことだけを切望していました。



そしてその死の土産として

一機でも敵機を落とし、

『国の為に散っていく』

それしか考えていなかったのです。



これだけを心に刻み、

戦闘の空へと、いともたやすく飛んでいく塁。






それは、本当にいつ死んでもいいのだと

そしていつ死んでもおかしくはない、

そんな塁のぎりぎりの飛行運転なのです。




尾上作品の1945シリーズは、

飛行機乗りがヤンチャだったり、

無鉄砲な飛行機乗りだったりと


それはハラハラするオトコたちが多いのですが、

その相棒たちは、必ず一緒に機体に同乗するため、

空の上で、一緒に死を覚悟することが多々ありました。





けれど、この『蒼穹のローレライ』では、


相棒の三上は整備士ですから、


塁の飛行機の無事の帰還を、
己の視覚におさめるまで、

生きた心地はしないのです。


このお話でも、わたしは三上寄りの目線で

塁の帰りを待ちわびる、

今日もまた帰ってきてくれたことに
ただただ安堵するのでございます。



だというのに、あの男、塁は、

自分の飛行機に、アンバラスな飾りをつけようとする。

それはU字型の鉄の部品で、
機体の先端につけていて、

操縦桿を握って、見つめる先に

その飾り部品は、まるで照準器のような役割を果たす。

そうすれば、敵機を一機でも落とす確率があがるわけで…




でもね、確かに敵機を当てる確率はあがるけれど、

飛行機がそれだけ空気抵抗を受けるため、

ちょっとした衝撃でも墜落する確率も高くなります。



飛行機整備士は
昔も今も
飛行機乗りの安全を守ることが役目ですから、


塁がその飾りU字をつけるたびに

三上はそれを必ず外します。


初めは三上だって整備士の矜持にかけて、

飛行機乗りの命を守るため、


機体にとって致命的ともいえるU字飾りを

意地でも外していたと思うのですが…



だけど、きっと三上は、
たまらなくなってしまったのだと思います。

外しても外しても、

塁は、またそのキケンな飾り部品をつけては飛行する。


それは、塁の悲痛な叫びのように、

空気抵抗をさらされた部品が鳴き声をあげます。

ピーーーーーッと、青い空に、切ない音を立てていくのです。



どんなに塁の飛行スキルが高くても、


敵に忍び寄る機体から音が出てしまっては、

敵にすぐに見つかってしまいます。


塁の機体は、

アンバランス飛行により墜落の危険性と

また、音がでるため、
敵から身を隠すことのできないというリスクを背負って

毎回飛行するのです。


なんていう自虐な男なんでしょうか。

そんな男を、

三上は地上からどんな思いで
毎回見送っていたかと思うと、

もういたたまれなくなります。


世間から後ろ指をさされ、
その身の置きどころのなさを、

搭乗員という形に見出し、

死を間近に見据え、毎回離陸していく。

大空を舞う塁の飛行機は、

悲鳴のような飛行音をたてるのです。

その音は、きっと三上にとって塁の泣き声に
聞こえたかもしれません。

三上はずっと塁の力になれないのだと
三上を信じることができない塁は、
だからやっぱり己しか信じられず、
そのU字飾りだけが塁の心の支えなんだと、
三上の為に生きるより、
家族の汚名を背負って死ぬことを選んでるのだと。


三上はあのローレライの歌声のような飛行音を聞くたびに

そんな辛い現実を突きつけられていたのかもしれません。


だから、絶対に機体から外したかったのかもしれない。

塁の心に打ち込まれた楔は取ってやれないけれど、
機体についたU字の飾りものを
せめて外してやりたかったのかもしれない。


三上目線のわたしは、そんな風に思ってしまうのです。





塁にとって、三上と出会えたことは、


きっと幸せなことであり、
そして不幸せなことでもあったと思います。





シニタクナイ!


あんなに死に急いでいた塁が

最期に願う言葉です。




心が虚無になれば、
死なんて怖くないのかもしれません。

三上に出会う前の塁なら、
何の躊躇も恐れもなく
あっけなく散っていったかもしれません。

けれど、
この世に守りたい人がいる、
愛する人がいる、

そんなとき人は強くなれるけれど、
同時に目の前に迫りくる死の恐怖から
逃げ惑いたくなるでしょう。

幸せの先には、三上のタレ目の優しい笑顔があるんですから。

そんな幸せをみすみす捨てたくないのです!

その瞬間の塁が思った、最期の言葉は、


彼の幸せと不幸せが背中合わせにある言葉です。


もう泣けて泣けて泣けて、

たまりませんでした。







三上はそれでも生きていかなくてはいけません。

塁の懐中時計は、ちゃんと三上の手で修理され
きちんと時を刻んでいきます。
でもどんなに修理上手な三上でも
三上自身の心の時計は直せないまま、


塁と別れたあの日から、


三上の心は止まったままなのだと。






真実を知らないまま生きてきた三上ですが、


最後に塁の真実を三上は知らされます。



知らせを持ってきてくれた青年が尋ねます。




『この(知らせ)封筒を三上さんに渡したことは正しかったのか?』


わたしも最初同じ疑問を持ちました。

戦後18年間、塁の死亡を確認できないまま生きてきた三上です。

ならば、最後まで、塁はどこかで生きているかもしれない、
そんな儚い希望を持ちながら、
残された余生を生きた方が幸せだったのではないか?


けれど、
塁の死亡証明ともなる辞世の句、

この言葉を初めて手にして

三上の心の時が動き始めることができるのです。


塁の死は、それが悲しくても辛くても、
三上は事実に顔をそむけません。
それを受け止める彼の強さに救われます。

この男は本当に大きくて頼りがいがあるのです。



そして、塁の辞世の句を知って

三上の気持ちが報われたことがわかります。





わかるんですけれど、


修行の足りない女は





その塁の最期の言葉に
嗚咽をこらえられませんでした。





シニタクナイ



切ない、切ない、切ない。
本当にたまらなくなります。



塁らしくない言葉であり、
けれど、三上と出会った塁の正直な心の叫び。


塁の最期に泣けるのか、

一人残された三上が切ないのか、

とにかく泣けて泣けて仕方ありません。





でもね、本の最後のページに、三上が空を見上げるんです。

彼の見上げた8月の空は、青く青く澄み切った空なんです。

きっと優しい色なんだと思えます。

塁がきっといるんだろうなあって。

愛おしいヒトを見つけた塁の心の色のような空の広がりが

読んだ後にもわたしの心に温かく広がっていくのです。



何度も何度も読み返したい1冊でございました。






オマケ:

三上が昔拾ってきた子猫の描写がちょっと出てきます。


なんだか、塁とリンクしてしまう。

塁は、子猫のように気まぐれで
そして愛しいオトコなのです。




悲しく切ないお話ですけれど、

どうしようもなく暗く沈んでいく色のお話ではありません。



腐ったノパールのきゅんきゅんどころも
ちゃんと兼ね備えてくれていて、


三上の口から、塁を呼ぶ呼称、『アンタ』


ノックダウンです。

あああ~たまりません。



普通の会話なのに、
三上の口からは
淡々と愛の告白やら、嫉妬やら
そんな睦言が上ります。
三上の言葉は、たまりません。
天然なんでしょうかね?


照れ屋の塁は、
いつも短い返事だけ。


でもこの無口な男が口にする言葉には嘘がありません。


子猫は自由奔放ですけど、

懐くとたまらなくかわいいでしょうね~







わたしの好きな会話です。

三上が塁の頬をなでながら、
戦闘に行く前の塁に

『ちゃんと帰ってきてください』

そんな言葉を投げかけます。



塁が、初めて、こんな風に答えます。



『……努力する』


大きな手のひらに撫でられる頬は
きもちよくて、子猫ならきっと喉をゴロゴロと慣らして
三上の手のひらにスリスリと顔を寄せたでしょうね。



次から次へと色々な楽しい場面が思い出せるから、


蒼穹のローレライは、
決して、哀しいだけの話ではないのです。






わたしの中の三上は、

あの知らせを受けてから、

それほど長くないほどに

塁のところに、安らかな旅立ちをしたに違いない、

わたしはそう思っています。

     

コメント

No title

そうかぁ~…ノパールさんには『ローレライ』が
Best of 尾上なのね!
私は『彩雲の城』かな☆
『ローレライ』は素晴らしい話だけど、やっぱり
片方が死んでしまうのが切なくて、読んだ後やり切れない。

でも、尾上先生は本当に凄い作家さんですね☆

12月に新刊が出るらしいですが、今度は1945シリーズとは
関係ないお話だそうです!
大正ロマンって書かれてたけど…ちょっと濃い内容みたいよ。
なにはともあれ楽しみです♪

最近、好きな作家さんから全然新刊が出てなくて淋しい!
ここらで一発『凄い新人さん』とか現われないかしら~

Re: No title

JUNさん:
えへへ、ベストワンが塗り替わりました~
彩雲も、まじよかったよね。
尾上作品の攻めは、
本当にどこまでも優しい攻めだよねvv

なんですと?
次回は大正ロマンですと?
それはかなり食指が動きます。

尾上作品の描写力に憧れているわたし、
やっぱプロだよね。圧巻です。

確かに、すご~い新人さんが出来てほしい!!

榎田先生はどうしてるんだろ?(涙
Secre

     
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プロフィール

ノパール

Author:ノパール
パトロン付きの毎日を満喫している自由人でございます。これ、きちんと訳しますと、勝手気ままに生きている専業主婦でございます。
年齢言いたがらない?これってかなり年だと思われます。でも心はいつでも年齢5チャイ!おいっ!

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